◆鐫界器
概要
『世界を鐫える(彫り込む、刻み込むというような意味)もの』の意。
感覚的に言うならば、ファンタジーで言うような『伝説の魔法道具』。世界に少数点在するが、人の手で作ることは未だに不可能であり、来歴は不明である。
鐫界器には各種一つ以上の『能力』があり、それらは『鐫界能力』と呼ばれる。
『鐫界能力』は、その鐫界器を用いて、魔法と同様に『起動』を命ずるアストラル体への虚数共振を起こすことで起動する。簡単に言うと、持って念じれば発動する。
この働きにSmp-1-DNAは関係なく、人間であっても、たとえ人間以外の知性を持つ生命体であっても使用することができる。
鐫界能力のバリエーションは非常に多岐に渡り、また、通常の魔法(基本相互作用)では物理的に不可能と思われる現象をも実現せしめる。
この特性から『事象・結果そのものを世界に彫り込んでいるかのようだ』とされ、鐫界器という名前の由来となっている。研究が進めば未知の物理法則が解明される可能性があるが、そもそも鐫界器自体の現存数が寡少である上、使いこなすことができる者も少ないため、展望が見えず、予算面においても現実的ではない。
ただし、各種鐫界器を万全に使用することができる者は限られており、加えて『一つの鐫界器を扱えれば他の鐫界器も扱える』わけではなく、一つ一つにそれぞれ適性がある。これに使用者の技量や能力、地位などは関係しない。
この現象は『鐫界器に使い手として選ばれる』とも捉えられる。
また、鐫界能力の起動には得てして大量のエーテルエネルギーを消費する。適性のない者が迂闊に使ったり、適性があったとしても慣れないうちに連発しているとすぐに魔力切れの昏睡状態に陥り、最悪の場合は負荷によってエーテル体が霧散し死に至るだろう。
詳細
【▼ネタバレ表示▼】
西暦4300年ごろ、緻密に制御された高次情報波の照射によって、人為的にフェイズ・ダウン現象を引き起こして作成された『生ける武器』。フェイズ・ダウンについては亜存在の項目を参照。
謂わば、無害化して調整した『人工の亜存在』を回路として組み込んだ兵装である。
虚数共振によって命令を受諾するために、鐫界器には『意識』があり、使い手を選ぶと呼ばれるのはこの意識体との相性によるもの。
実際に発生している物理現象はというと、虚数共振によって命令を受け取った鐫界器の核が、作成時に人為的に歪められた『命令文』の通りに、世界を構成する最も根源的な単位――現在そう捉えられている『量子』のレベルよりも遥かに根源的な――謂わば『記述言語』とでも呼べるようなものに干渉し、その命令通りに世界を書き換えてしまうというもの。
これは、高次元存在がこの宇宙に干渉する際に用いられる主な手段と全く同じ原理であり、謂わば鐫界器とはそれぞれが限定的な『神々のエミュレーター』といえる。
実際に発生する現象は、その『神々』の御業に比べればごく小規模かつ単純なものだが、人の身からすればいずれも通常到達不可能な驚異的領域である。
元々は、亜存在と交戦中の国連軍に所属していた技術士官クリスチャン・ローゼンクロイツによって開発された。
研究当初は半ば手探り状態で、多く人体実験を行っていた。この際、どれほど『失敗』して亜存在化し、処分された人間がいたかは記録されておらず、定かではない。
ただし後の自律駆動型の開発には、この時の実験が大いに役立ったとされる。
その後、所持者の意識(虚数領域の)共振によって特定の機能を発揮する、『意思を持たない高次元生命体』としての、最初の鐫界器が完成。
実験の危険性・不安定性から、量産体制に入ることはできなかったが、反面、開発者の発想が膨らみ次第、さまざまなタイプが作られていった。
これは、どういったものが亜存在に対して特に通用するのか全く解らなかったため、トライアンドエラーを繰り返してノウハウを蓄積していったということでもある。
また、使い手を選ぶ上、魔力を消耗しすぎて使い手を危険に晒すという難点を解決するため、危険を承知で開発されたのが『自律駆動型』である。
つまり人間や亜人種を『その姿と知性を保ったまま、鐫界能力を持たせてフェイズダウンさせる』ということだが、これは謂わば人為的に神(ちゃんと意志を持つ高次元存在)を造る行為であって、『知恵の回る亜存在』という、(もし反逆されたら)最悪の敵を造り出す方法でもあった。
結果として人類が鐫界器に反逆される事は無かったのだが、『自律駆動型』の開発によって巻き返しはじめた人類は、亜存在に対する勝利を見ることなく、クロノブレイクによって全歴史を終了。
爆心地付近に集中していた鐫界器は、その多くが過去の地球上に飛ばされ、『伝説の武器や防具』として歴史の表舞台に登場することとなる。