◆くろ子
わりと無害な怪異の少女。
名前は本来存在しないが、彼女をよく知る者からは、外見上のイメージからかなんとなくこう呼ばれている。また、彼女を追う者からは“
性格は陰鬱で内向的で自虐的。黒髪で両目をすっぽりと覆い、他者を拒絶するかのように振る舞う。家は無いのに引きこもり。
今にも消え入りそうな声でおずおずと喋るが、決して無口というわけではない。警戒しているだけである。
基本的に世間知らずだが、変なところで人間臭い。
頭が悪いわけではないが、知識的には無知である。自我が確立された段階では平均的な小学二年生程度の知識しか持たなかった。知識の吸収率自体は良いので、周りの人間に様々なことを教えられているが、如何せん偏りがあることは否めない。
元は、とある街で、“意識の残響”(虚数領域残留体)である怪異“レギオン”が人工的に大量発生させられるという事件が発生した際、その群れの中から突如として生前の形骸と意識を取り戻し、独立した個体。
残留アストラル体で虚数存在が構成され、エーテル体が存在しないレギオンは魔力(エーテルエネルギー)を自己生成できないため、実数領域における“現象”としての存在を維持することができない。そのため、夜間に生命体を襲って魔力を奪っていたのだが、意識を持った彼女はそれを拒み、消滅しようとしていた。
しかし、廃工場でひっそりと己の存在を磨り減らしていた彼女の元に、大量のレギオンに追われた黒神小夜が逃げ込み、彼女を脱出させるために力の大半を消費。消滅を目前にして、彼女の持つ特性を見抜いた小夜によって、“エーテルスフィア”を身体に埋め込まれ、擬似的ながら一個の生命体となる。
自分を見失わない範囲でなら、身体の一部を“影”に変化させることができる。
普段纏っている服も身体が変化したものであり、ある程度自在に形を変えられる。
生前の彼女は孤児であり、特に問題があったわけではなかったが、その引け目が性格形成に影響していたようだ。
十四歳の頃、特に仲が悪いわけでもなかった同級生四人に殺害され、身体を九つに分割される。死体はまるで“生贄儀式”のように、血で描かれた魔法陣の上に配置された状態で発見された。
これが実は“歪”という怪異に関連した事件であり、名無子たちが全て解決した事を、彼女は知らないだろう。