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記憶の断片『Calculation/Speculation』



会話の断片

Calculation/Speculation

- 白き匣にて -




兇闇(まがつやみ)の話は聞いていたかね?」
「まー、粗方(あらかた)ね」

 (うつせ)の声にそう答えて、レイは背もたれに身を預けて天井を仰いだ。

「自我を強く残した亜存在、ヘイトと名乗る亜人、そして謎の鐫界器(せんかいき)……か」
「予想外のアクシデントではあったが、私達が得られた情報は大きい」

 向かいに座った彼は、薄い笑みを浮かべてテーブルを指で叩きながら返す。
 その隣に目を()れば、(かくり)が眠たそうな顔をして、手にしたDSで黙々ともじぴったんをプレイしている。彼女の意見も聞いておきたいところだったが、どうも「る」から始まる言葉を使った連鎖を考えるのに忙しそうなので後にしておくことにした。

「うーん、いきなり空中に大質量を出現させるなんて、鐫界器ってホントどうなってんだろ」
「ふむ……アストラルの実数界校正を応用しているのではないだろうか、と思うのだが」
「やっぱそれが推測としては一番信憑性があるかもね……くぅっ、早く虚数物質関連の詳細な原理が知りたいっ」

 好奇心を身体一杯に表して、レイはまるで遠足を明日に控えた子供のような表情で腕を広げた。
 対する現は柔和な笑みを浮かべて、懐からメモ用紙のような小さな紙を二、三枚ほど取り出すと、それを広げてテーブルの上に提示する。
 そこには、可能な限り簡略化された設計図面のようなものが書かれており、その横に幾つかの物理法則が添えられていた。

「こうなってくると幽体動力機(エーテルジェネレータ)の開発についても急を要しそうだ。特性上、君にも手伝って貰わねばなるまい」

 レイはそれを手にとって、軽く流し読みをする程度に眺めてみる。簡単に書いてあるように見えて内容は難解そのもので、レイ自身もこれだけでは全容を理解しきれそうにない。が、どうやらこれがその幽体動力機とやらの設計図であることだけは把握した。

「えーっと、兇闇くんが人間に化けてたアレ?」
「正確に言うなら、それを動かしていた装置だな。ラファエルの提供してくれた理論を元に試作したもので、大気中のエーテルから半永久的にエネルギーを産出し、設定されたプログラムを発現し続けることができる」

 エーテル。それは一般に魂だとか命だとか呼称されている、虚数物質の一種である。
 タキオン粒子によって構成された虚数物質は、ターディオン粒子によって構成されるこの実数世界との相互干渉を行わない――そう思われていたのは、少し過去までの話。
 生命体を動かす信号命令は、全てエーテル体から取り出されるエネルギーによって行われている。亜人種の扱う魔法という技術は、彼ら特有の遺伝子の働きで、それを体外に応用することによって発現される現象だ。
 そして、生命体それぞれが持つ高密度のエーテルは、肉体的な死と同時に剥落して大気に溶け込む。いや、固体や気体などの区別もなく全てが光速以上のスピードで動き続ける虚数空間では、混沌に拡散する、と言った方が剴切(がいせつ)な表現だろうか。

 虚数物質はその特性上、観測がかなり難しく、詳細については未だ不明な部分が多い。だが、上記の現象くらいなら、今となっては学校でも習うような常識である。
 以上を踏まえて、現の言った幽体動力機についての説明を要約すると――

「予め機械にインプットした魔法を発動し続ける、って事ね」
「大雑把に言えばそうなるな」

 ――と、言うことだ。
 現は溜息を一つ吐くと、軽く腕組みをして言葉を続ける。

「魔法はその特性上、定常的に効果を持続することは難しい。意識に依存すると、どうしてもブレが出る」
「色調擬態や物質透過なんて、そりゃもう超高精度の操作が必要……でも、機械じゃ正確に同じ事を繰り返せる、と」
「同じ事しかできないとも言うがね、ただ魔力走査(スキャニング)も併せればそれなりに応用も可能だ」

 兇闇は髪や肌、瞳の色を変えることによって人間になりすましていたようだが、これらの操作を自力で行うのは殆ど不可能だと言っていい。要求される操作の精密性もさることながら、その効果を自身の動作に合わせて調整しつつ四六時中効果を発現させ続けるなど、やる前から無茶だと解る。
 しかし、単に反射光の波長を調整すればいいだけの話なのだから、その操作自体は複雑なものではない。静物を対象としたものならば、色調変化は中学か高校程度で習う初歩的な魔法だったはずだ。
 周囲に魔力を走らせて探査する魔力走査に関しては、放った魔力から情報を受け取るコツを(つか)むのに苦労するだけで、消費する魔力はそこまで多くない。機械が行う分には何の問題も無いだろう。
 となれば後は簡単なものだ。走査した範囲内にある、指定した材質と色を持つものにインプットされた色調変化魔法を発現するだけで、外見の人間化は成り立つ。

 とはいえ、抜けた髪は機械の走査範囲を越えた時点で白色に戻るので掃除を忘れると不自然になるし、角のように人間には無い部分ともなると、いくら透過しても触れば解ってしまう。神経が通っているわけではないので、擬態している期間中だけ切断しておいて後から魔法で再接続することも可能だが、そこまでするかどうかは解らない。
 ……そこまでしないだろう、と言い切れないのは、レイが彼らをよく知っているが故なのだが。

 しかし、もっと複雑な回路を組めば、より有用な機械が幾つも完成することだろう。
 無尽蔵のエネルギーと言うものは科学者の夢でもある。それがまさに自分の手で実現しようとしているのだ、その感動は非常に大きい。そんなレイの様子を察してか、現は穏やかに笑って唇を開く。

「周辺のエーテル濃度に魔力使用量の限界が依存してしまうため、あまり派手なことは出来ないが……ラファエルの話では、平均値の十倍程度のエーテル濃度があれば、城クラスの建造物を空中に固定することもできたらしい」
「すっごいなあ、夢の機械じゃない! あの(ひじり)ちゃんて子が使ってたって言う真空相転移砲も魅力だけど、こっちもいい感じっ」

 瞳を輝かせながら両腕を広げるレイを見て、現は苦笑して椅子に背を預けた。

「まあ……あまり良い事には使われそうもないな。核融合エネルギーの二の舞やも知れん」
「何に使われるかは関係ないわっ、科学者ってのはそういうもんさ!」
「ふふ、無邪気なものだな。例えば、現在完成している小型のものだけでも、そう言う風に作りさえすればスイッチ一つで君の服を透明にすることもできるのだ、あまり理論が流出して欲しくないとは思わんか」
「うわおッ! そ、そんな利用のされ方は流石に勘弁だなぁ……考え直そ」

 レイは焦り顔で、わざとらしく身体を隠すように両腕を胸の前で交叉させて苦笑を返す。現はその向かいで、くすくすと含み笑いを漏らしていた。
 原子力のようなエネルギーは発電所などで平和利用されるか、爆弾に用いられて軍事利用されるかのどちらかに用途が限定されるが、幽体動力機の性質を考えると、そんな下らないことにも簡単に利用できるだろう。下手に理論を公表すれば、大きなものから小さなものまで犯罪の種になるであろうことは明白である。

「……うーくんも、そういうの見たいの?」

 どうやらプレイしていたステージをクリアできたらしく、幽はDSを畳んでから伏し目がちに問いかけた。
 現は相変わらず微笑を湛えたままで、隣に座る彼女の頬をつつきながら問い返す。

「気になるかね?」
「……別に」

 ふいと恥ずかしそうに目を逸らす幽。傍目には解りづらいが照れているらしく、白い頬がやや赤みを帯びている。
 レイは悪戯っぽくにやりと笑うと、そんな幽に追い打ちをかけるように勝手な言葉を連ね始めた。

「あ、あれだ幽ちゃん、そんな見たければこのワタクシが見せてあげるわよ☆っていうアプローチかけようと」
「っな……違う違うっ、そういう(いじ)り方は反応しづらいから止めて……」
「うふふふふ、かーわいーい」
「か、からかわないでよ……」

 幽は後ずさる場所もなく、縮こまるようにしてたじろぐ。頬の紅潮はさらに強まり、泳ぐ視線は彼女の戸惑い具合をよく表していた。
 そんな彼女の姿を見て、現は楽しそうに微笑みながら一つ溜息を吐く。いつものような貼り付けた笑顔ではなく、滅多に見せない彼自身の顔だ。

「こうしている姿を見ると、君が戦闘要員だとは思えないね……数多くの戦場を征し、黒蝶姫(こくちょうひめ)と異名を取った銃使いの面影は何処へやら」
「そっ、その名前は恥ずかしいから呼んじゃダメだってば……っ」

 照れも最高潮に達したらしい幽は、テーブルに組んだ両腕に自らの顔を埋めた。自分のそんな表情を見られたくないのか、それとも含羞(がんしゅう)のあまり他人の目も見られなくなったのかは判らないが、いずれにせよひどく照れているらしいことはよく解る。

「ううっ、いっつもそう……たまに口開くといぢめられる……」
「あはは、ごみんごみーん」

 謝る気など毛頭ないと自分でも解るような謝罪をして、レイは頭の後ろで手を組んで笑った。
 ほんの僅かな静寂が白い部屋に落ち、現の声がそれを断ち切る。

「とかく、先に備えて開発を急がねば。半永久的にエネルギーを取り出せる装置と言うだけでも、研究価値は莫大だ」

 その表情は、再びいつもの無機質な微笑に変わっていた。暗く紅い瞳の奥に感情は見えず、ただ目の前にあるものだけを映し出している。いつものことと言えばそれまでだが、レイはその変わり身に微かなうそ寒さを覚えた。

「半永久的、かー……ミスったらどうなっちゃうんだろ」
「およそ考えつく中で最大のミスは二通りある。この宇宙が無くなるか、新しく宇宙ができるかだな」
「うっわスケールでけえ!」

 そして、何の気無しに問いかけた言葉への返答があまりに予想を上回っていたため、そんな考えはものの見事に吹き飛んだ。
 そんなレイを前にして、ミスったら宇宙がヤバい機械の開発を計画した張本人である現は特に変わった様子も見せず、淡々とした口調で説明を付け加える。

「と言うのも、魔力……虚数エネルギーの正体が解らんからなのだ。無から有を生み出している時点で奇妙だ。ここからは単に推測なのだが……魔力とは、先刻も話に出た真空の相転移エネルギーと同一のものではないかと私は思う」
「同一?」

 そう、真空の相転移エネルギーは現在考えられている宇宙開闢(かいびゃく)の要因のうち一つに数えられている。同質のエネルギーを扱うのだから、確かに同じ事が起きる可能性も否定できない。レイも年こそ若いが理学博士(Dr.rer.nat.)の称号を持っているのだ、それについては理解できる。
 だが、魔力とそれが同一のものであるとは、如何(いか)なる学説にも記されていなかった。無論、自分自身で考えたこともない。魔力というものはエーテル体の働きによって虚数物質が実数エネルギーとして変換されたものとばかり思っていたが、観測手段がろくに無い以上、虚数空間に関して確定できることも同様に無いのだ。
 聞きながら、レイは思わず身を乗り出していた。現もそれに応じてか笑みを形作るのを止め、至極真剣な表情を顔に乗せる。

「最もスマートに考えると、な。無論、別のダークエネルギーと言う可能性もある。私が言いたいのは、エーテルはそれ自体がエネルギーを産出しているのではなく、何処かに潜在しているエネルギーを顕在化しているに過ぎないのではないかと言うことだ」
「えーと……ちょっと待ってよ、って事は生命体って……」
「うむ、この考えだと生命体が存在しているだけで虚数エネルギーの総残量は減り続け、(やが)ては枯渇する」

 そう言った現の睨むような眼光にレイは一瞬たじろいで、高鳴る胸を両手で押さえつつ、緊張に溜まった唾を嚥下(えんか)した。
 次の言葉を待っていると、不意に現はにこりと笑って、穏やかな口調で続ける。

「まあ、憶測は前提にすべきではない。ここから先について真剣に語るのはナンセンスだ」
「うー、焦らすなあ。そのもしもの話≠烽ソゃんと出来上がってるんだろうに」

 身体を深く椅子に落として、レイは深く息を吐いた。続きが気になることではあったが、彼がそこで止めたと言うことは、特に今語るべき事も無いと言うことなのだろう。
 現はわざとらしく誤魔化すように「そんな事よりも」と続けた。

「考えるべき事は山積みだ。時間軸崩壊(クロノブレイク)∴ネ前の遺産を修復する必要もある……特に航宙艦、あれは是非実用化させておきたい」
「今はただの飛行船だもんねえ」

 宇宙を飛ぶ船の実用化が現代でどう必要になるのかは解らないが、レイ個人としても、確かにオーパーツ群の機能再生には興味があった。彼の意見には全面的に同意である。
 レイが答えた後、現は(しばら)く目を細めて何事か考えていたようだが、こつりとテーブルを指先で叩いてから台詞の続きを語り始めた。

「設備がほぼ無傷なのは非常に大きな幸運だ。あとはエネルギーさえあれば位相推進機関(フェイズドライバ)も可変型ワープナセルも偏向装置(デフレクター)も問題なく並列起動できるはずだな」
「核融合炉じゃ役者不足だよね、やっぱ……本来は反物質炉が使われてたみたいだけど、流石に今の科学力じゃ燃料確保できないし」
遮蔽装置(クローキングデバイス)くらいは動かせるから良いがね」
「それはちょっと、無ければ危ないしねー……いろんな意味で」
「しかし今では燃料を手に入れるのも一苦労だ、いくら研究にドイツ政府の協力を得られているとは言えどな……軍事利用も可能であるが故の共生≠ニ言えなくもないが」

 長考による沈黙と、再び落ちる静寂。窓の外から、休憩時間らしき薔薇(ばら)十字団員たちの話し声が遠く響いている。
 ややあって、今度はレイが最初に口を開いた。

「やっぱり、まずは幽体動力機の開発が第一ね。さっきのもしも≠ェ本当だったら、確実に代用品以上のものになる」
「正・反重水素も確保しておこうとは思うが、それができれば言うこと無しだな」

 今後の予定については、これで確定したようだ。()しくは既に確定していたことなのかも知れないが、やることが変わらないのなら、そのようなことは細事である。
 数刹那(せつな)の間を置いて、話が解決するタイミングを見計らっていたかのように、隣で顔を伏せたままだった幽が起きあがる。その人差し指は、自分の腕時計を指していた。

「うーくん、そろそろ時間」
「おや、本当だ……済まないね、幽」

 そう言って椅子を立つ二人に無言の問いを送ると、現は笑ってこう返す。

「私はもう何人か、子供達を迎えに行ってくるとしよう」
「あー、ライトくん達もそっち行っちゃうのかー、どんどん寂しくなるなあ……」

 合点がいった。以前から話していたように、レイの元で助手として働いている亜人の兄妹を、彼のパーティに加えるという件だ。
 彼の側にいると言うことがどういうことか解っている身としては、我が子も同然の彼等をそこに置くのは正直言って気が進まない。だが、彼がわざわざ申し出るのなら何か意味があることなのだ。特に――彼ら二人を指名するのなら、決定的である。
 まあ、今日もついてきていたリミルと言う少女は、戦闘要員でもないのに八歳の頃から彼について世界中を回っていたと言う。それで無事だったくらいだから、恐らく今度も大丈夫だろう……とは思う。
 それに、彼等は危険な場所には配置せず、普通の学校生活を送らせるつもりだと言っていたし――後々ちょっと危険な事に巻き込まれる可能性が大きい≠ニも言っていたが、なれば尚更、彼の所に置いておいた方がいい。レイの所にいても、恐らくその危険はやってくるだろう。

「ふむ……アルトヒンメルなら会いたくなればすぐ着けるだろう、定義的にはあれもドイツ国内だ」
「いやァ、なんだかんだで研究に没頭しちゃうんだよね、一人だとさ……家事係がいないと困るわー」

 現の言葉に、笑いながら返すレイ。自慢じゃないが、ライト達兄妹がいなければレイの部屋はものの三日で腐海に呑み込まれるだろう。本当に自慢じゃない。インスタントラーメンをビーカーとガスバーナーで作っていた日々に逆戻りである。

「ふふ、科学者らしいな。薔薇十字団の構成員から誰か引き抜いて来てはどうだね」
「うーん……リミルちゃんが何か見っけてくれれば暫く研究所を離れられるから、そんなヒマもできるんだけどな」

 現にくっついてきていたリミルは、自分がここにいても仕方がないからとフィールドワークを手伝ってくれている。ドイツ南西部に位置する森、シュヴァルツヴァルトの奥地で虚数空間の濃度に異常が起こっていると言う観測結果についての調査である。
 最近その近辺では、半壊していて小さいが奇妙な遺跡じみた場所が見つかっており、オーパーツの残骸とも取れるものが多数発掘されているだけあって、何か見つけられれば大物である可能性が高い。無論、どのようなものであるか、何が起こるかの予測もつかない。

 それだけに、レイの言葉を聞いた現が、妙に大きく口角(こうかく)を上げて含み笑いを漏らしたのが、どうにも気になった。

「また面白い事件にでも巻き込まれなければいいがね、ククク……」

 絶対なんか仕組んだろお前。
 ……とは言えず、レイは遠い目で彼を見つめることしかできなかった。

 そういえば、リミルと同じようにライト達も今日は調査に出している。彼の目論見がだいたい予測できると同時に、ちょっと危険なことに巻き込まれる≠フが後々≠ゥらこの後すぐ≠ノまで早まるのではないか、と嫌な予感、というか予想が頭を()ぎった。

 ドアを開ける前に、彼は一度振り返ってレイの目を見据えた。紅玉(ルビー)のように暗く透き通った真紅。その色に底知れぬ闇を見て取れるのは、恐らくレイだけではあるまい。本当に彼の思惑通りに動いていて良いのだろうか、と、そんな考えがふと頭を掠める。

 彼は、何かを企むような笑みを浮かべて、囁くような、しかしはっきりと頭に残る声で、最後に宣言をする。

「目安は一週間後だ、薔薇十字団兵器開発チームは大型幽体動力機が開発でき次第、魔導兵器の開発及び航宙艦の強化修復に着手する。時が来ればラスティの手も借りねばなるまいな。いざ刮目(かつもく)して見よ、今この時から世界は大きく動く……」

 そして扉は閉められ、後には静寂だけが残された。



「……彼等はエインヘルヤル……か。まるで北欧神話の再現だね……」

 レイは独り、真っ白な会議室の隅っこに座って、真っ白な天井を見ていた。
 呟く声はひどく細く、どこかうそ寒い。

大いなる神々の運命(ラグナロク)≠フ果てに、君は何を望んでいるんだ……オーディンは死んだよ、現……?」

 ――その声は、届くべき人へは届かずに、白い(はこ)の中で溶けて消えた。



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